2016年9月23日金曜日

グレポン東壁へ

 シャモニーのキャンプ地を出発した僕達はメールドグラス氷河の末端、モンタンベールまで登山電車で行き、グレポン東壁目指して氷河を遡った。ドリュー、クルト針峰、ロドワット、グランシャルモ、そしてエギュー・ド・グレポン、3000メートルから4000メートルの山々がコバルトブルーの空にそびえ立つ。

メールドグラス氷河 中央トゥール・ロンド 右はシャモニー針峰群

メール・ド・グラス氷河右岸のシャモニー針峰群。中央がグレポン東壁


メールドグラス氷河左岸の針峰群 左よりドリュー、ヴェルト針峰、レ・ドロワット

メールドグラス氷河を遡る


 強い日射しを受けながら氷河の上を二時間ほどでグレポンの麓ヘたどり付いた。氷河とお別れして東壁下部の非難小屋を目指して岩場を登る。通常はアルベール小屋ヘ泊まり翌日グレポンを目指すのだが、二食ベット付きの山小屋ホテルは宿泊費が高く贅沢だ。アルベール小屋を通り越して東壁下部の無人の非難小屋で一夜を過ごす事にしていた。(勿論この小屋は無料だ。)





アルベール小屋が中央に見える。後ろがグレポン東壁の下部



 ところが登っても登っても小屋が見つからない。想像していたよりも東壁の下部は複雑で大きく、小屋を探して歩き回っているうちに日が暮れてきた。小屋泊まりを諦めて岩場でビバーグをする事にした。日没、花崗岩と氷雪の山々は残照を受けて美しく輝く。

ビバーグ地のツールツージュ(赤い塔)にて


ツールツージュでのビバーグ 手前からサブちゃん、私、上田さん

左よりグランド・ジョラス、ドーム・ド・ロシュフォール、モン・マレ

夕暮れのロシュフォール針峰(左)とダン・デ・ジュアン(巨人の牙)(右)
 翌朝、7時から行動開始と出遅れる。グレポン東壁の登攀ルートは左端の岩稜だ。東壁の付けねを目指して緩やかな岩場を登り傾斜のきつくなってきた所で左の岩稜へ向けてトラバースして行く。
 僕はこの花崗岩の岩壁に対して、既に大きな失敗をしていた。それは登山靴である。グランドジョラスは標高4200メートル、マッターホルンは4400メートル、岩と氷の山でアイゼンの着用を想定していた。それに対応すべく頑丈な登山靴を履いていたのだ。それはドイツ製の靴でヒマラヤの7000メートルクラスの山でも耐えられるという、恐ろしく頑丈な登山靴だった。そしてそれは花崗岩の岩壁には恐ろしく不向きな登山靴だった。
 ガチガチの靴底でフリクションを効かせるのは容易ではない。凍傷から指先を護る為に丸く幅広に作られた爪先は花崗岩の登攀に特有の細いクラックに引っ掛からない。
アプローチの易しい岩場で神経を使い思わぬ時間をくってしまう。
 みると既に10時になろうとしている。頭上に聳える岩壁を見上げながら、800メートルの東壁を登り、反対側の400メートルの西壁を下り、更に氷河を降って、今日中にシャモニーまで帰りつけるのか、全く自信がもてなかった。僕たち4人は同じ思いだったようで、誰からともなく撤退と決めこんだ。

グレポン東壁での中井。 背景はグランド・ジョラス(左)ロシュフォール針峰(中央)
ダン・デュ・ジェアン(右)

 メールドグラス氷河目指して下って行くのだが、ここまで迷い迷い来たのだ、帰りも案の定難儀な下降となった。
 道などある訳ではない、岩場や傾斜の緩い氷壁を降ってメールドグラス氷河をすぐ真下にした処で100メートル近くの断崖に阻まれた。
 アプザイレン(懸垂下降)で降るのだがザイルはドッペル(二重)にして40メートル、一回のアプザイレンで済めば問題は無いのだが二回、三回となると厄介である。中継点にうまい具合にテラスかバンドがあれば良いが、なければザイルにぶら下がって支点のハーケンを打たなければならない。
 断崖の上を歩きながら下降地点を探す。幸い氷河まで続くチムニーを見つけて二度のアプザイレンでメールドグラス氷河へ降り立つ事ができた。


メール・ド・グラス氷河へ降りる最後の岩壁の下降。中央にいるのは中井

メールドグラス氷河にたどり着く


 すでに太陽は傾き急ぎ足でメールドグラス氷河を急ぎ足で下りモンタンベール駅へ着いた時は、すでに最終電車の出発した後だった。僕たち四人はシャモニーへと続く長い線路の上をとぼとぼと歩いた。


この写真はモンブランの帰り、この時も電車に間に合わずに線路を歩いて下山


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