僕と仲井は会社を辞めてアルプスへやって来たので時間はたっぷりあるが、サブちゃんと上田さんは勤め人で三週間程の休暇をとっての遠征だ。今までの山行でかなりの日数を費やしている。残りの日数を考えるとあまり余裕がない。とにかくグランドジョラス北壁へアタックだ。登れなくても挑戦だけはしたい。僕たちは三日間の休養をとって再びモンタンベール行きの登山電車へ乗り込んだ。
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ベースキャンプでの食事風景 |
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ジョラス挑戦を前にピッケルを砥ぐ上田さん |
グレポンの時と同じようにモンタンベール駅で登山電車を降りてメールドグラス氷河をさかのぼる。
グレポンの麓を過ぎた辺りから左に延びる支流のレショ氷河へ入るとグランドジョラス北壁がその姿を現した。屏風の様に聳える山容は三つの頂を持ち、氷河からそれぞれの頂へ伸びる三つの岩稜で構成されている。
左からウオーカバットレス、中央バットレス、クロバットレスと呼ばれ、それぞれに登攀ルートがある。1200メートルの標高差を持つウオーカバットレスが最も大きく困難で人気が高い。
僕達の目標は当然ウオーカバットレスだ。このバットレスには近年、非常に困難なルートが開かれたが僕らの登るルートは1934年にイタリアの名クライマー、リカルド・カシンがこのバットレスを初登攀した時のクラッシックルートである。
ジョラス目指してレショ氷河を登る。氷河は上にいくほど傾斜がきつくなり、スケールの大きさは今までの経験とは違っていてペースが狂い疲れが激しい。
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メール・ド・グラス氷河にて、中井の注文でポーズをる上田さんと私。 |
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メール・ド・グラス氷河からレショ氷河へ入るとグランド・ジョラスが姿を現す。 |
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標高差1200メートルの北壁が圧倒的な迫力でせまってくる。
左からウォーカーピーク、ウィンパーピーク、クロピーク。
左の岩稜がウォーカーバットレス |
氷河の左岸上にジョラス登攀のベースになるレショ小屋が見えた。氷河から抜け出し急なガレ場を登りレショ小屋へたどり着く。
小屋へ着いた時には急な登りで汗びっしょりになっていた。レショ小屋は花崗岩の巨大な一枚岩に守られるようにして建てられたアルミ壁の20坪ほどの平屋建てで食事も用意してくれる。いよいよ明日はグランドジョラス北壁の挑戦だ。残照に輝く山々を眺めながら期待と不安が交差する。
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レショ氷河からレショ小屋への登り |
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レショ小屋 |
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レショ小屋にて手前から、中井、サブちゃん、上田さん。 |
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